子どもが産まればかりなのですが、僕はまだ30代だし遺言書は書いていなくても大丈夫ですよね?
まずはご出産おめでとうございます。
遺言書についてですが、実は小さなお子様がいらっしゃる方こそ遺言書を作成しておくべきだと私は考えています。
えぇっ?!そうなんですか?
遺言書は高齢になってから書くものだと思っていました。
なぜ若いうちから遺言書を作成した方が良いのですか?
それでは、僭越ながら相続対策を専門としている行政書士Nが解説させて頂きます。
Aさんのように遺言書は「高齢になってから作成するもの」と考えている方は多いかと思います。この記事では子育て世代が遺言書を作成しておくべき理由を解説します。
大切な家族のため、この記事を読んで遺言書の作成についてご家族で話し合ってみてください。
未成年の子どもがいる場合に遺言書を書く理由とは?
まず遺言書が無い場合に相続が発生すると、通常は相続人全員で遺産分割協議を行い遺産の分割方法を決定しなければなりません。
しかし、未成年者は遺産分割協議に参加できないため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てなければなりません。大切な家族が亡くなり悲しみにくれている中、この申立てにかかる手間や時間、費用はご遺族にとって大変な負担となってしまいます。
遺言書を作成しておくことで遺産分割協議の必要は無くなり、残された家族の負担を大きく軽減することができます。
遺言書が無い場合のデメリットとは?
未成年の子どもは遺産分割協議に参加できないの?
ここでは、イメージしやすいよう山田さん一家のケースをもとに解説します。
下図は山田家の相続関係説明図となります。
山田太郎さんは不幸にも交通事故により若くして急逝してしまいました。そして太郎さんはまだ若いからと遺言書を作成していませんでした。
この場合、相続人は妻・花子さん、長男・一郎くんの2名となり、遺産分割協議を行う必要があります。しかし、先ほど述べたように未成年の子どもは遺産分割協議に参加することができません。このため、長男・一郎くんに代わって遺産分割協議に参加する代理人が必要となってきます。
配偶者と子どもは利益相反の関係にある
通常、未成年の子の代理人は法定代理人として親が勤めていますが、法定代理人である妻・花子さんは遺産分割協議の参加者であり、「利益相反」の関係となってしまうため一郎くんの代理人となることは認められません。
この場合、一郎くんを代理して遺産分割協議に参加する人(特別代理人)を家庭裁判所に申立をして選任することになります。
特別代理人選任の申立手続きについて
特別代理人選任の申立て手続きは、おおむね以下の流れで進むことになります。
1.申立て準備
必要書類の収集・特別代理人候補者の選定
2.家庭裁判所へ特別代理人選任の申立
3.照会
家庭裁判所から申立人と特別代理人候補者宛に照会書が送付されます。
4.回答書の提出
照会書に対する回答を家庭裁判所に返送します。
5.審判
家庭裁判所が申立てに関する審判を行い、特別代理人が選任されます。
6.選任通知
選任された特別代理人に選任審判書が送付されます
7.遺産分割協議および手続き
特別代理人が未成年の相続人を代理して遺産分割協議を行い、必要な相続手続きを進めます。
このように手続きだけでもかなりの負担が発生してしまいます。
特別代理人選任のデメリット
特別代理人選任のデメリットは主に以下の5点となります。
1.必要書類の準備
申立てには多くの書類が必要で、これらを準備する手間がかかります。具体的には、未成年者の戸籍謄本や親権者の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票などが求められます。
2.申立て手続きの負担
特別代理人を選任するためには、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
3.専門家への報酬
家庭裁判所への申立てを弁護士や司法書士に依頼する場合、その報酬が発生します。
4.時間的な負担
特別代理人の選任には通常1カ月程度の期間がかかります。
5.特別代理人への報酬
特別代理人の報酬は、原告(申立人)が支払う必要があります。 報酬の金額は、5~10万円程度になるのが通常です。
遺言書を残していないことで、遺族にこれだけの負担をかけることになってしまいます。「まだ若いから遺言書は自分には関係ない」と思わず、大切な家族のためにシンプルな遺言で良いので遺言書を作成しておくことをお勧めいたします。
【相続税】未成年者の税額控除の適用を忘れずに
相続手続きの話からは逸れますが相続人の中に未成年の子どもがいる場合、相続税申告の際に【未成年者の税額控除】を適用することができます。
具体的な控除額の計算方法は以下のとおりです。
(18歳-相続した時の年齢)× 10万円
相続税の基礎控除(3,600万円+相続人の人数×600万円)と比べると少額ですが受けられる控除は漏らさず適用するようにしましょう。
まとめ
ここまで述べてきたように未成年の子どもがいるご家庭で何も対策をしていなかった場合、残された家族にとって相続手続きの負担が強くなってしまいます。
万が一に備えて遺言書を作成して備えておくことが極めて有効な対策となります。
なお、遺言書の作成・保管方法により主に以下の3種類に分類されます。
1.公正証書遺言
2.自筆証書遺言(法務局保管)
3.自筆証書遺言(自宅等保管)
子育て世代が作成する場合、各種リスクが少ない・検認手続きが不要・作成費用を抑えられる・公正証書遺言ほど手間がかからない2.自筆遺言証書(法務局保管)で作成すると良いでしょう。
遺言書の種類についてはこちらの記事をご参照ください。
大切な家族のためにも、先延ばしにせず遺言書を作成することをお勧めいたします。
それでは(^_^)/~