遺言書は、遺言者の最後の想いを残されたご家族に伝えるための大切な書面です。
財産の承継先の指定しておくことで、相続人間の争いを防止したり、相続人の相続手続きを簡略化させることができます。
遺言書の要式は法律で定められており、よく調べないで作成するとせっかく作成した遺言書が無効となってしまうリスクがあり注意が必要です。
また有効な遺言書であっても、分割方法の検討が十分でなかったために相続人間で争いが生じてしまったり、余計な税金がかかったりしてしまう場合もあります。
当事務所では、各ご家庭にとって最適な方法を十分に検討してご提案させて頂いております。
遺言書について
遺言書作成のメリットと作成しなかった場合のデメリット
遺言書を作成して財産の承継先をあらかじめ定めておくことで、相続発生後の相続手続きを簡略化したり相続人間の紛争を回避することが出来ます。
一方で遺言書が無いと、原則通り戸籍を集めて相続人全員で遺産分割協議書を作成しなければなりません。
遺言書作成のメリットと作成しなかった場合のデメリットを確認しておきましょう。
遺言書作成のメリットと作成しなかった場合のデメリットの詳細
遺言書作成のメリット
- 資産承継先の指定
資産承継先を定めておくことで、遺言者の希望に沿った遺産分割とすることが出来ます。 - 家族間の紛争回避
遺言者の意思を明確にすることで相続人間の紛争リスクを低減することが出来ます。そのためにも遺留分に配慮した遺言書の作成が求められます。 - 相続手続きの簡略化
遺言書が無ければ被相続人の戸籍を集めて、相続人全員で遺産分割協議書を作成する必要があります。
遺言書を作成していれば被相続人の戸籍に関しては死亡時の戸籍だけで済み、遺産分割協議の必要はありません。
公正証書遺言・自筆証書遺言(法務局保管制度利用時のみ)で作成した場合は、裁判所の検認手続きも省略することが出来ます。 - 推定相続人の確定
遺言書作成時に戸籍を確認しておくことで、推定相続人を確定することが出来ます。
稀に、普通養子縁組して養親に預けた実子を養子に出したから相続人では無くなったと勘違いしていたり、隠し子がいるケースがあります。
この場合、事前対策を行っていなければ相続発生後にとこれらの方と交渉する必要が生じてしまいます。
遺言書を作成しないデメリット
- 資産承継先が不確定
遺言書が無く、本人の希望が不明なため資産承継先は相続人任せとなります。 - 家族間の紛争リスク
相続人間で意見の違いから紛争が発生するリスクがあります。 - 相続税の増加リスク
相続税の観点で効率的な遺産分割方法とは異なる分割を主張する相続人がいた場合、効率的な分割方法と比べて相続税が増加するリスクがあります。 - 相続手続の遅延
遺言書がある場合と比較して、遺産分割協議の成立・戸籍の収集の分だけ相続手続きの完了に時間がかかってしまいます。 - 想定外の相続人の登場
上記「遺言書作成のメリット④」の反対で、ケースとしては少ないですが被相続人が勘違いしていたり、隠していたりしてご家族の方が全く知らない相続人が登場するケースがあります。
遺言書で出来ないこと
相続対策として遺言書は最も一般的な方法ですが、万能ではありません。
認知症対策とはなりませんし、資産承継対策としても遺言書作成後の資産組み換えに対応しづらいところがあります。
遺言書で対応出来ないことを把握して、家族信託や任意後見等の他の制度と組み合わせて総合的な相続対策を検討するようにしましょう。
遺言書で出来ないことの詳細
遺言書で出来ないこと
- 認知症対策とはならない
遺言書は相続が発生して始めて効力が発生するため、認知症対策とはなりません。認知症対策には「家族信託」「任意後見契約」「生前事務委任」などで対応します。 - 資産承継対策の柔軟性に欠ける
遺言書作成後に不動産を売却するなどして資産の組み換えをした場合、遺言書の再作成を検討する必要があります。
一方、「家族信託」では資産の組み換えをしても信託財産の承継先は信託契約で定めているため、遺言書のように別途手続きの必要は生じません。
このため遺言書と家族信託を比較すると、家族信託の方が資産承継対策の柔軟性があると言えるでしょう。 - 認知症発症後は変更が不可能
遺言書は上書きが可能なので、後から発生した事情を考慮して資産承継先を変更することが可能です。しかし、認知症発症後は遺言書を作成することが出来ないため以後の対策は不可能となります。
「家族信託」であれば信託財産化した財産については信託を受託したご家族の方の考えで財産の組み換えができるため、認知症発症後でも資産組み換え等の対策が可能です。
遺言書の種類
遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があります。
「公正証書遺言」は公証役場で作成するため、遺言書の中で最も証拠能力が高いです。当事務所では「公正証書遺言」での作成をお勧めしております。
後に争いに発展する恐れが無なければ、コストを抑えられる「自筆証書遺言」の作成も検討して良いでしょう。
「秘密証書遺言」は実務上ほとんど利用されていません。
1.自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者自身で遺言書を作成する方式の遺言書です。
自宅等で保管する方法と法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用して保管する方法があります。
保管方法によりメリット・デメリットが異なります。
自筆証書遺言【自宅保管】のメリット・デメリット
自筆証書遺言は遺言者自身が自宅や貸金庫等で保管しておく必要があります。
自筆証書遺言の自宅保管にはデメリットが多く、自筆証書遺言を選択される場合は後述の法務局の「自筆証書遺言保管制度」の利用を推奨しております。
自筆証書遺言【自宅保管】のメリット
- すぐに作成することが出来る
ご自身で作成する方式のため、思い立った時にすぐに作成することが出来ます。
遺言書の内容はしっかり検討したうえで作成しましょう。
公正証書遺言を作成するまでの繋ぎとして、「とりあえず遺言」として活用する方法もあります。 - 作成に費用が発生しない
ご自身で遺言書を作成するので作成時に費用は発生しません。
なお、遺言書の内容を専門家に相談する場合は報酬が発生します。
自筆証書遺言【自宅保管】のデメリット
- 紛失・改ざん・不発見のリスク
自宅等で保管するため、紛失・改ざん・相続時に発見されない等の恐れがあります。 - 遺言書の形式不備
遺言書の形式について公的機関でのチェックが入らないため、形式不備により遺言書の効力が否定される恐れがあります。 - 公正証書遺言と比べ証拠能力が劣る
公証人による本人に対する意思能力の確認が無いので、公正証書遺言と比較して証拠能力は低いです。
相続人間で争いになる恐れがある場合は公正証書遺言を作成しましょう。 - 遺言書の検認が必要となる
相続発生後に家庭裁判所で「遺言書の検認」を申立てる必要があります。
検認手続きには手間と時間がかかり、手続きを専門家に依頼すれば費用が発生します。
自筆証書遺言【法務局保管】のメリット・デメリット
自筆証書遺言を法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用して保管します。
法務局で保管するため遺言書の紛失・改ざんのリスクが無く、その他にも様々なメリットがあります。
自宅保管のデメリットの大半を解消出来るので自筆証書遺言を作成する場合は法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することをお勧めいたします。
ただし、保管申請時に本人確認書類として運転免許証やマイナンバーカード等の顔写真付きの官公署から発行された身分証明書が必須となるため、身分証をお持ちでない方は利用できません。
自筆証書遺言【法務局保管】のメリット
- 紛失・改ざん・不発見のリスクが無い
法務局で保管するため、紛失・改ざんのリスクが無く、遺言書が発見されないリスクが低い。 - 相続人に対する通知制度がる
法務局で保管するため、紛失・改ざんのリスクが無く、相続時発生時に推定相続人に通知が届くため遺言書が発見されないリスクが低い。 - 遺言書の形式チェックがある
遺言書の形式について法務局でチェックするため、形式不備のリスクが無い。 - 遺言書の検認が不要
自宅保管では必要だった相続発生後の家庭裁判所での「遺言書の検認」が不要となります。
その分、相続手続きを早く進めることが出来ます。 - 公正証書遺言より早く作成できる
公正証書遺言と比較して、公証人とのやり取りが含まれないので作成までの期間が短くできます。
法務局へ申請するため自筆遺言証書の自宅保管よりは時間がかかります。 - 公正証書遺言より低コストで作成できる
公正証書遺言と比較して公証人への手数料が不要な分、費用を抑えることが出来ます。
自筆証書遺言の起案を専門家に依頼すればその費用が発生します。
自筆証書遺言【法務局保管】のデメリット
- 顔写真付きの身分証が必要
顔写真付きの官公署から発行された身分証明書(運転免許証,マイナンバーカード等)が無いと法務局の保管制度は利用できません。 - 法務局保管に若干の手数料がかかる
法務局保管申請の際に若干の手数料がかかります。(3,900円/1件) - 公正証書遺言と比べ証拠能力が劣る
公証人による本人に対する意思能力の確認が無いので、公正証書遺言と比較して証拠能力は低いです。
相続人間で争いになる恐れがある場合は公正証書遺言を作成しましょう。
2.公正証書遺言
公正証書遺言は公証役場で作成する遺言書です。作成に公証人が関与するため遺言書の中で最も証拠能力が高く、後公証役場で原本を保管するため紛失・改ざんのリスクがありません。
公証人への手数料が発生しますが、確実な遺言書の作成のため当事務所では「公正証書遺言」の作成をお勧めしております。
公正証書遺言のメリット・デメリット
公正証書遺言のメリット
- 紛失・改ざん・不発見のリスクが無い
公証役場で保管するため、紛失・改ざんのリスクが無く、遺言書が発見されないリスクが低い。 - 遺言書の形式不備の恐れが無い
公証役場で作成するため遺言書の形式不備の恐れはありません。 - 遺言書の検認が不要
相続発生後の家庭裁判所での「遺言書の検認」が不要となります。
その分、相続手続きを早く進めることが出来ます。 - 遺言書の証拠能力が高い
公証人による本人の意思能力の確認があり、遺言書の中で最も証拠能力が高い。
公正証書遺言のデメリット
- 自筆証書遺言と比べて作成に時間がかかる
事前の公証人との打ち合わせや面談など手続きに時間がかかる。 - 公証人への報酬、証人への報酬等の費用がかかる
公証人への手数料がかかります。財産内容によって変動します。一例として財産価格5,000万円・相続人3名の場合、約8万円ほどになります。
作成時に証人2名が必要になります。遺言者側で証人を用意できなければ公証役場等で揃えてもらえますが、証人に対する報酬が発生します。 - 公正証書遺言と比べ証拠能力が劣る
公証人による本人に対する意思能力の確認が無いので、公正証書遺言と比較して証拠能力は低いです。
相続人間で争いになる恐れがある場合は公正証書遺言を作成しましょう。
3.秘密証書遺言
遺言書の内容を「秘密」にしたまま、遺言書の存在だけを公証役場で認証する方式で作成する遺言書です。
公証人ですら遺言の内容を把握しないため、遺言書の内容を完全に秘密にすることが出来ます。
実務上はほとんど利用されていません。
遺言書作成の流れ
ご相談
お電話、LINE又は「お問い合わせフォーム」からお気軽にご相談下さい。
ご面談
行政書士がお客様と面談して、遺言書を用いてどのような希望を実現したいのかヒアリングいたします。
遺言書だけでご希望を実現できない場合は、家族信託など他の制度の利用もご提案いたします。
他の制度も含めたご提案は、検討する時間を頂いてからのご提案となりますので予めご了承ください。
最適な生前対策の検討・ご提案のため、お客様の財産開示をお願いしております。ご協力のほどよろしくお願いいたします。
ご面談の際はお客様のご自宅や事務所など、ご指定の場所にお伺いします。
初回のご面談時は特に書類はご用意いただかなくても構いません。面談時のお話しを踏まえて集めて頂く書類をご案内致します。
生前対策のご提案
ご面談時にお伺いしたご希望をもとに、お客様に最適な生前対策をご提案いたします。
ご提案内容にご納得いただいてから手続きを進めることが出来ます。
ご提案時に生前対策のご提案費用(金2万円+税)のご請求をさせて頂きます。
なお生前対策をご依頼頂いた場合、ご提案の報酬は遺言書作成等の報酬に充当させて頂きます。全体の費用は変わりませんのでご安心ください。
書類収集・相続関係説明図作成・財産目録作成
戸籍や財産価格を証する書面(通帳コピー、不動産登記事項証明書、評価証明書等)などの書類を集めます。
当事務所では書類の取得代行を承っておりますのでお気軽にお申し出ください。
集めた書類をもとに相続関係説明図・財産目録を作成いたします。
遺言書の起案
ご提案した生前対策の内容で遺言書を起案いたします。
ご家族のメッセージ(付言事項)など、必要に応じて打ち合わせさせて頂きます。
公正証書遺言作成の場合
公証人との調整
行政書士が公証人と打ち合わせします。
公正証書遺言の作成
遺言者及び証人2名(行政書士等)が公証役場へ赴き、公証人が公正証書遺言を作成します。
外出できない場合は公証人に出張をお願いすることもできます。(別途出張料が発生します。)
納品
戸籍、財産目録、遺言書などの書類を整理して納品します。
自筆証書遺言【法務局保管】の場合
遺言書の作成指導
遺言書の形式に沿うように遺言書の作成指導いたします。
法務局への予約・保管申請
法務局へ「自筆証書遺言保管制度」の手続き予約をします。
予約した日時に法務局へ来庁し、遺言書の保管申請を行います。
代理申請が認められていないため必ず遺言者自身で行う必要があります。
行政書士が申請に付き添い、手続きをサポートいたします。
納品
戸籍、財産目録、遺言書などの書類を整理して納品します。