相続した実家を売却する際に取得価格を証明できる書類(売買契約書、建築請負契約書や領収書など)が見当たらないと、売却時の譲渡所得税で大きな負担が発生するリスクがあります。

このリスクを回避するためには、親が健在なうちにこれらの書類を確認し、適切な対策を講じることが重要です。

本記事では、取得価格が不明な場合の税金リスクと、その対策について解説します。

実家購入時の売買契約書や領収書が見つからないとどうなるの?

まず、不動産譲渡所得税の金額は以下の計算式で計算することになります。

不動産譲渡所得税の計算式

収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

課税譲渡所得金額×15%=税額
※実家相続を想定していますので長期譲渡所得の税率を適用

分かりやすいように具体例を挙げて説明しますので、実家の売買契約書や領収書の有無による不動産譲渡所得税の違いを把握しておきましょう。
計算のベースとなる前提条件は以下の通りです。

【前提条件】

実家購入時の取得費:3,000万円
相続した実家の収入金額(売却金額):3,200万円
実家売却のために直接かかった費用(譲渡費用):300万円
特別控除額:適用なし 

実家の売買契約書や領収書の有無により、不動産譲渡所得税の計算において以下のような違いが生じてしまいます。

1. 取得費の証明ができる場合

まずは、実家購入時の売買契約書や領収書があり、取得費が証明できるケースを計算していきます。

取得費の証明ができる場合の具体例

3,200万円 - (3,000万円 + 300万円) - 0 = 0万円

0万円 × 15% = 0万円

この場合、譲渡所得が無いことから譲渡所得税は0円になります。

2. 取得費の証明ができない場合

取得費の証明ができない場合、取得費は売却価格の5%とみなして計算することになります。
具体例の場合の取得費は売却価格3,200万円×5%=200万円となります。

取得費の証明ができない場合の具体例

3,200万円 - (200万円 + 300万円) - 0 = 2,700万円

2,700万円 × 15% = 405万円

取得費が証明できない場合、不動産譲渡所得税は405万円となり、本来支払わなくてよい税金を負担することになってしまいます。

このように、取得費の証明が出来ないと本来支払うべき税額よりも多くの税金を支払うことになり、予期しない金銭的な負担を強いられることになります。

そのため、事前に実家の取得費を証明する書類を確認しておくことが重要となります。

親と話し合って実家の取得時の領収書等を確認しておきましょう

無駄な税金を支払わないためにも、親が健在なうちに実家の売買契約書・建築請負契約書・領収書などの書類を確認しておくようにしましょう。

原本は親が保管し、コピーを取って手元に置いておくと安心です。

また、これを機に親と相続の話を始めるきっかけになるかもしれません。
まだ相続について話しができていない方は、この話題をきっかけにしてみるのも良いでしょう。

取得費を証明する書類が見つからない場合の対策

取得費を証明する書類が見つからなくても焦る必要はありません。
いくつか対策がありますのでご紹介いたします。

1.    実家購入時の取得費を合理的に算出する方法

この方法では、税務署が合理的な価格であると認める必要があります。
税務署の判断となるため、必ずしも認められるとは限りません。
実際に適用する場合は税理士に依頼することをおすすめします。

合理的な算出の具体例:
·住宅ローンを利用した場合の登記簿謄本に記載されている抵当権の設定金額
·購入時の通帳記録、住宅ローンの返済履歴
·住宅ローンを利用した場合の金銭消費貸借契約書のコピー、返済予定表
·購入時の不動産業者の価格が記載されたパンフレット等
·市街地価格指数を用いた推計

 2.    特例を適用して譲渡所得を抑える方法

相続した実家を売却した場合、要件を満たしていれば「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を適用して最高3,000万円まで譲渡所得金額から控除することがができます。

特例を適用した場合の具体例

3,200万円 - ( 200万円 + 300万円) - 3,000万円 = 0万円
 

0万円×15%= 0万円

今回の具体例では、譲渡所得が無いことから譲渡所得税は0円になります。

ただし、申告に必要な書類の準備には手間がかかるため、なるべく取得費を証明する書類を見つけることをおすすめします。

なお、本特例の詳細は国税庁のウェブサイトでご確認ください。国税庁HPのリンクを末尾に記載しておりますので興味のある方はご参考ください。

 まとめ

実家の売買契約書や領収書が見当たらないと、不動産譲渡所得税の計算において、本来よりも高額の税金を支払うことになる恐れがあります。

親が健在なうちに、取得費を証明する書類(売買契約書、領収書など)の保管場所を確認し、コピーを取ってご自身の手元にも保管しておくようにしましょう。

国税庁HP関連項目リンク
No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
No.3252 取得費となるもの
No.3255 譲渡費用となるもの
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

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